半年眠っていたスーツを、そろそろタンスから。型崩れせず、長く着続けるための、衣替え前のひと手間を、お伝えします。
クローゼットの奥から去年のスーツを出してみたら、肩のあたりがぽこっと出っぱっている。膝が抜けてぽっこりしている。なんだかシワっぽくて、そのまま着るのはちょっと…。
そんな経験、ありませんか?
ご主人の通勤スーツ、お子さんの面接用の一着、久しぶりの礼服。9月は、そういう「半年ぶりの一着」が一斉に出てくる季節です。
じつは、スーツの型崩れの多くは、着ている間ではなく「しまっている半年間」に進んでいることがあります。逆に言えば、出すとき・しまうときのひと手間で、寿命はぐんと変わります。
この記事の結論(先にお伝えします)
- 型崩れの一因は「湿気」と「重み」。ウールは重量の15%前後の水分を含む性質があり、湿ったまま吊るすと自重で形が落ちていきます
- 衣替え前にやることは5つだけ。①風通し ②ブラッシング ③シワ落とし ④点検 ⑤ハンガー交換
- クリーニングはシーズンの終わりに1回が基本。「しまう前」に出すのがいちばん効きます
- スラックスのゴワつきは洗いすぎではなく、汗の蓄積が一因と考えられます
- 迷ったら、LINEで写真を送るだけで無料相談・お見積りができます
そもそも、スーツの型崩れはなぜ起きるの?
「乱暴に扱った覚えはないのに、なぜか形が崩れている」。よく聞くお声です。原因は、大きく3つに分けられます。
①ウールは、思っている以上に水を含んでいます
ウールの公定水分率は15.0%(JIS規格)。これは、ふつうの状態でも繊維が重量の15%前後の水分を含んでいることを示す数値です。綿の8.5%と比べても、かなり水を抱えこみやすい素材だとわかります。
ウールは湿気を吸うと、繊維がやわらかくゆるみます。そのゆるんだ状態で、上着の重さやハンガーの当たり方に長時間さらされると、そのままの形で乾いて固定される。これが、肩の出っぱりや袖のねじれの一因と考えられます。
②ハンガーが「肩を押し広げている」
クリーニング店でお渡しする針金ハンガー、そのまま半年かけっぱなしになっていませんか。あれは持ち帰り用で、長期保管用ではありません。
細いハンガーは、スーツの肩の丸みを一点で支えることになり、肩先がとがったり、へこんだりする原因になります。
③汗と皮脂が、時間をかけて生地を硬くする
汗の成分は約99%が水分と言われていますが、残りの1%ほどに塩分・皮脂・尿素などが含まれます。水分だけが蒸発すると、この1%が繊維の奥に残ります。
残った成分は空気中の湿気を呼び、酸化して黄ばみやニオイに変わっていくことがあります。「去年しまったときは何ともなかったのに、出したら黄ばんでいた」というのは、これが起きていた可能性があります。
衣替え前、家でできるお手入れは?【5ステップ】
どれも5分程度でできることばかりです。上から順にやってみてください。
STEP 1まず、風を通す
クローゼットから出したら、直射日光の当たらない場所で2〜3時間ほど陰干しします。半年分こもった湿気とニオイが、これだけでかなり抜けます。窓を開けた室内、または扇風機を弱で当てるだけでも十分です。
日なたに干すのは避けてください。ウールは紫外線で退色したり、風合いが変わったりすることがあります。
STEP 2ブラシで、上から下へ
洋服ブラシを使って、襟→肩→袖→身頃の順に、上から下へ一方向で。往復させるとホコリが生地に戻ってしまいます。
1着あたり1〜2分で構いません。毛先のやわらかい馬毛のブラシが扱いやすいです。ブラッシングは、ホコリを落とすだけでなく、寝ていた繊維の向きを起こす役割もあります。
STEP 3シワは、湿気で落とす
浅いシワなら、お風呂上がりの浴室にハンガーで30分ほど吊るすだけで落ちることがあります。湯気で繊維がゆるみ、自分の重さで伸びていくためです。
その後、浴室から出して2時間ほど陰干しし、湿気を抜いてからしまってください。湿ったまま戻すと、カビの原因になることがあります。
STEP 4明るい場所で、点検する
窓際など明るいところで、次の4か所を見てみてください。
- 襟の裏・袖口…黒ずみやテカリがないか
- 脇の下…黄ばみが出ていないか
- スラックスのお尻・膝…テカリ、生地の薄さ
- 全体…小さな穴(虫食い)がないか
虫食いは、開いてしまうと元に戻せません。穴を見つけたら、同じ引き出しの他の衣類も点検されることをおすすめします。
STEP 5ハンガーを、厚みのあるものに替える
肩幅に合った、肩の厚みが4〜5cmある木製やプラスチック製のハンガーへ。肩のカーブに沿って支えられると、それだけで形が保たれます。
スラックスは、折り目に沿って裾を下にして吊るすと、自重でシワが伸びていきます。
◯ こうすると長持ちします
- 着たあとは2〜3時間、風に当ててからしまう
- 同じスーツを続けて着ず、1〜2日休ませる
- 肩に厚みのあるハンガーを使う
- クローゼットには「ぎゅうぎゅうに詰めない」(こぶし1つ分のすき間)
- 防虫剤は衣類の上に置く
× こうすると傷みやすいです
- クリーニングのビニールをかけたまま保管する
- 針金ハンガーに半年吊るしっぱなし
- 脱いですぐクローゼットへ直行
- 気になる部分だけを水でこすって落とそうとする
- 天日でしっかり干す
とくに多いのが、ビニールをかけたままの保管です。あのカバーは配送中のホコリよけで、通気性がほとんどありません。中に湿気がこもり、カビや黄ばみにつながることがあります。持ち帰ったら外して、不織布のカバーに替えるか、そのままかけておくのが安心です。
スラックスがゴワゴワ…洗いすぎが原因ですか?
「洗いすぎて硬くなったんでしょうか」とよく聞かれます。じつは、現場で見ているかぎり逆のことが多いです。
スラックスは上着より汗を吸います。腰まわり、太もも、お尻。座っている時間が長いほど、生地に汗がしみ込みます。その汗の中の塩分や皮脂が乾いて繊維に残り、それが層になって蓄積すると、生地が硬くこわばってくる。洗いすぎではなく、洗われていない汗の蓄積が一因と考えられます。
スーツを2着でまわしている場合、スラックスは上着の2〜3倍のペースで汚れていきます。上下セットで同じ回数だけ出していると、スラックスのほうが先にへたるのは、このためです。
対策はシンプルで、スラックスだけ先にクリーニングに出すこと。上下で洗い回数がずれると色差が出ないか心配される方もいますが、同じ工程で洗っていれば、通常の着用期間で気になるほどの差が出ることは多くありません。気になる場合は、シーズン最後に上下そろえて出していただければ大丈夫です。
クリーニングに出すのは、いつ・年に何回?
ご家庭での着用頻度によりますが、目安はこのくらいです。
| 着用のしかた | 上着 | スラックス | 出すタイミング |
|---|---|---|---|
| 毎日通勤(2着でまわす) | シーズンに1〜2回 | 月1回程度 | 汗をかいた直後/しまう前 |
| 週2〜3日 | シーズンに1回 | シーズンに2回 | しまう前 |
| 礼服・冠婚葬祭のみ | 着用のたびに1回 | 着た日から1週間以内 | |
いちばん大事なのは「しまう前に出す」ことです。
見た目にきれいでも、汗や皮脂は繊維の中に残っています。その状態で半年しまうと、酸化が進んで黄ばみになったり、虫を呼び寄せたりすることがあります。虫は繊維そのものより、汗・食べこぼし・皮脂のついた部分を好んで食べる傾向があります。
礼服については、着る機会が少ないぶん「一度着ただけだから」としまわれがちですが、黒い生地は黄ばみが目立ちやすく、いざというときに困ります。着た日から1週間以内を目安にお出しください。
プロは、何をしているのか
「家で陰干しするのと、何が違うんですか」。そう聞かれることがあります。私たちがスーツ1着にしていることを、正直にお話しします。
- 静止立体乾燥…人の体に近い形のボディにスーツを着せ、動かさずに乾かします。ウールは湿った状態でゆるみ、乾く瞬間に形が決まる。だから「どんな形で乾かすか」が、そのまま仕上がりになります。回転させるドラム乾燥では、この形は作れません。
- 部位ごとの手作業プレス…肩、襟、ラペルの返り、袖山。カーブのある場所は機械にまかせず、一か所ずつ手で当てていきます。ラペルの立ち上がりを潰さないよう、押さえる強さも変えます。
- 1日60点までのお預かり…当店は1日にお受けする枚数を60点までに限っています。1着ずつ状態を見て、洗い方と乾かし方を決めるためです。数をこなす仕事にすると、この確認ができなくなります。
- 資格と技術…国家資格であるクリーニング師の免許を持ち、京技術修染会に所属しています。創業から50年以上、二代目としてこの仕事を続けています。
とくにスーツは、洗いの技術より乾かしの技術で仕上がりが分かれます。型崩れしたスーツも、乾かし方次第でかなり戻せることがあります。「もうダメかな」と思う一着でも、一度ご相談ください。
しまうときは、どうすればいいですか?
防虫剤は「上」、除湿剤は「下」
防虫剤の成分は気体になると空気より重く、上から下へ流れていきます。ですから、引き出しなら衣類の上、クローゼットなら吊り下げタイプが向いています。
逆に、湿気は下にたまりやすいため、除湿剤は床に近い場所に置くと効率よく働きます。
種類の違う防虫剤は、混ぜない
成分の異なる防虫剤を一緒に使うと、まれに溶け合って衣類にシミを作ることがあります。詰め替えるときは、前のものを取り除いてから入れてください。
クローゼットは、こぶし1つ分あける
カビは湿度60%以上・温度20〜30℃で活動が活発になると言われています。衣類を詰め込むと空気が動かず、この条件がそろいやすくなります。ハンガー同士の間隔は、こぶしが1つ入るくらいを目安に。
月に一度、クローゼットの扉を開けて30分ほど空気を入れ替えるだけでも、状態はかなり変わります。晴れて空気の乾いた日を選ぶと効果的です。
あわせて読みたい
写真を送るだけで、無料相談・お見積り
「この肩の出っぱり、戻りますか?」
「黄ばみがあるけど、間に合いますか?」
気になる部分をスマホで撮って、LINEで送ってください。
二代目の私が直接見て、洗えるかどうか・どのくらいで仕上がるかをお返事します。
北九州市小倉南区の店頭受付のほか、全国からの宅配クリーニングも承っています。
よくあるご質問
- Q. スーツは家の洗濯機で洗えますか?
- 洗濯表示に水洗いのマークがあり、ウォッシャブル対応と明記されたスーツであれば、家庭でも洗えることがあります。ただし、上着の肩や胸には芯地が入っており、水と回転で芯地が縮んだり、表地との間にズレが出て波打ったりすることがあります。スラックス単体なら家庭洗いのハードルは下がりますが、折り目が消えやすい点にご注意ください。判断に迷われたら、洗濯表示を撮ってLINEでお送りいただければお答えします。
- Q. 一度型崩れしたスーツは、元に戻りますか?
- 状態によりますが、戻せることがあります。ウールは湿気でやわらかくなり、乾くときの形で固定される性質があるため、もう一度湿らせて、正しい形で乾かし直すという工程で改善するケースが多くあります。当店では人体に近い形のボディに着せた状態で乾かす静止立体乾燥を行っています。ただし、芯地が剥がれている場合や、生地そのものが擦り切れている場合は、洗いでは戻りません。まずは写真でご相談ください。
- Q. クリーニングに出してから、どのくらいで戻ってきますか?
- 通常のスーツで3〜5日ほどを目安にしていただいています。シミ抜きが必要な場合や、衣替えの時期は少し長くいただくことがあります。お急ぎの日程がある場合は、お預かり時にお申しつけください。1日60点までのお預かりとしているため、ご希望の日に間に合うかどうかを、その場でお答えできます。
- Q. 保管サービスはありますか?
- はい、シーズンオフの衣類をお預かりする保管付きのクリーニングを承っています。ご自宅のクローゼットのスペースが空くだけでなく、温度と湿度を管理した環境で保管しますので、カビや虫害のリスクを下げられます。冬物コートやダウン、礼服など、次のシーズンまで着ないものに向いています。詳しくはLINEでお問い合わせください。
- Q. 礼服は着るたびに出したほうがいいですか?
- そうしていただくのが安心です。一度の着用でも、襟や袖口には皮脂が、脇には汗がついています。黒い生地は黄ばみやテカリが目立ちやすく、次に着るときに気づいても間に合わないことがあります。着用後1週間以内を目安にお出しいただき、そのまま保管に回すという方も多くいらっしゃいます。
- Q. スーツの上下、片方だけでも出せますか?
- もちろん承ります。むしろスラックスは上着より汗を吸うため、単品で先に出していただくほうが、生地の持ちという点では合理的です。上下で洗い回数がずれても、同じ工程で洗っていれば、通常の着用期間で色差が気になることはあまりありません。気になる場合は、シーズンの最後に上下そろえてお出しください。
ファミリークリーニング|北九州市小倉南区
創業50年以上/二代目 神林章二(クリーニング師・京技術修染会 会員)
1日60点までのお預かりで、1着ずつ状態を見て洗い方を決めています。
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